新規取り扱い蔵 《松乃井酒造場》ご紹介

15年程前、たか田で大好評頂いていました新潟県十日町市の銘酒《松乃井》

たか田が開店した当時(H10)、お酒のメニュー(15アイテムほど)の7割が新潟酒でした。当時は淡麗辛口ブームで八海山、久保田を全種類取り扱っており、新潟の辛口が幅を利かせていました。

そんなある夜、カウンターに出張で東芝府中工場に来られた一人の男性がお座りになり、お酒を飲みながらお話をしました。「実は私の父親が十日町の小さな酒蔵、松乃井酒造場で蔵人ととして酒を造っていまして・・・結構、綺麗で旨味のある酒なんですよ。」その頃、たか田の酒の品揃えに漠然とどうしたら良いかと思案中でした。こんなグットタイミングは無いと「是非、松乃井をご紹介ください」とお願いし、お父様経由で蔵元に取り次いで頂きました。蔵人からの話と言う事もあり快諾を頂き、お酒を直送して頂きました。初めて飲んだ松乃井 吟醸生酒は、程良い吟醸香にツルツルと喉を滑って行く心地よい飲み口と後口の良さ、特別本醸造は軽く、上品で、食中にぴったり。全く既存の新潟酒とは違う一つ上を行く酒質に感激しました。5年間ほど取扱いご愛飲頂いていました。その当時のお客様で、松乃井がことのほか気に入って頂き毎回ご愛飲頂いた方もいた程です。

その後、たか田の取り扱い酒の増加に伴い、メニューから外れておりました。

今夏前から松乃井蔵元と連絡を取り、再度の取り扱いをさせて頂けることになりました。

先日(R1/8/19)、十日町まで車を飛ばし松乃井酒造場の常務取締役兼杜氏の古澤 裕氏、奥様の布美子さんにお会いしました。

十日町市は新潟県南部にあり、町の中央を信濃川が流れ、雄大な河岸段丘が形成されています。この土地は縄文時代以前から人が住みついたところで、昔から交通の要所、現在はほくほく線と飯山線が交わる町となっています。又、特A魚沼産コシヒカリの産地として広く稲作がされるだけではなく、京都・西陣と並ぶ紬織りの一大産地だったそうです。 

魚沼コシヒカリで知られる豪雪地にある松乃井は、環境と人の手を酒造りの芯と考える蔵元。恵まれた自然環境の清冽な雪解け水を用い、手作業で美酒を醸し続けています。地酒ブーム時に東京の百貨店の問合わせに対し、地元重視の姿勢を貫き、今でも生産量の七割以上が地元消費されています。本当の意味での地酒ですが、近年、鑑評会金賞など評価も高い。

日本酒大国の新潟県。

その中にあって、松乃井はきれいな酒質、程よい吟香、米の旨味を引き出し、後切れも良い。

ツルツルと飲める美味し酒。この上なく極上の一滴を醸している。

【松乃井 酒へのこだわりと戦い】

赤松林から湧き出る水、良質な酒米、そして自然豊かな風土、これらを無くして松乃井は醸せない。
創業当時からこんこんと湧き出る横井戸の軟水を用い、良質な酒米を自社精米する事により、昔から妥協しない酒造りを行っている。

◎松乃井のこだわり

1.ザルによる米の手研ぎ
2.昔からの和釜での蒸米
3.機械に頼らない麹造り
4.泊まり込みによる、もろみ管理
5.吟醸酒以上の酒は全て槽搾り

◎酒造りは様々なものとの戦いである

◆温度との戦い
・極寒の蔵内での作業
・冷水での洗米
・仕込みの温度管理
・麹の種付けの温度
・発酵中のもろみの温度管理

◆時間との戦い
・秒単位の洗米作業
・蒸米のさらし時間
・製麹の時間
・その他にも水分、白米、麹、蒸米、出麹、これらと戦っている。

過去のデータもあるのだが、米の出来、そして水温や気温等、毎年同じとは限らない。そんな色々な戦いに勝って良い酒が生まれてくる。
飲んでいただいた方に美味いと言っていただけると戦いの苦労なんて吹き飛んでしまう。
そしてまた、酒造りに挑戦しようと思うのである。

『松乃井酒造場 杜氏 古澤 裕』

【譲れない杜氏としてのこだわり】

清酒「松乃井」で知られる当社は、明治27年(1894年)に十日町の酒蔵「澤乃井」から分家して川西町で創業しました。その後、赤松林から良い水が湧き出るという事で現在の場所に蔵を移転。今でも創業当時からの横井戸からの湧き出る軟水を仕込み水として使っており、その水は、柔らかく、しなやかで酒造りに最適です。この水で仕込んでいることから新潟酒の特徴である淡麗辛口タイプですが口当たりの柔らかさと広がる味わいが飲み飽きしない酒質となっています。

酒米は、旧川西地区の(株)きおとしという所で「たかね錦」という酒米を作って頂いて、特別純米酒に使っていますし、純米大吟醸の「凌駕」というお酒はJAS法にのっとった有機栽培米を使用していまして、それも地元の農家で作ってもらっています。

作り方にもこだわっていて、それぞれの精米歩合を管理できるよう、精米は蔵内で行っています。そして精米された米は、蔵人たちがザルによる米の手研ぎを丁寧に行い、昔ながらの甑(こしき)で蒸します。酒しぼりにおいては、吟醸酒では昔ながらの、酒袋にもろみを入れ、槽(ふね)でじっくりとしぼり、大吟醸酒ではもろみを入れた酒袋を吊るして、自然にじっくりと搾り出しています。

手作業による酒づくりは、手間もかかり、出てくる酒も少ない。粕も多めに出ます。でも、飲んだ時の柔らかさ、味のふくよかさは機械搾りとは全く違います。それだけは譲れません。限られた出荷量だからこそ、手間をかけても、お客様に喜んでいただけるお酒をこれからも提供していきたいと思います。

松乃井の火入れ(加熱殺菌)はビン燗!美味しいお酒を飲んで欲しい。たったひとつの想いから、松乃井酒造場の火入れ作業は、手間のかかるビン燗を採用しています。生酒の状態でお酒をビン詰めし、そのビンを50℃のお湯につけ65℃まで15分かけて上昇させ、その後引き上げて急冷し、ビンが乾燥してからラベルを貼ります。これらすべて手作業、ビン燗はお酒の風味を殺さない火入れ方法ですが、大変な手間と時間がかかることから、採用する蔵はごく一部に限られます。

「大変ですね」と伺うと、「この方が絶対美味しい状態で飲んでいただけますから」と一言。

何かと効率化が叫ばれる世の中ですが、あえて苦労してでも美味しさを選ぶ蔵がいるということをぜひ知っていただきたい。