日本酒塾

【日本酒塾】酔鯨酒造

◎旨し酒を醸す蔵元のご紹介(たか田酒の会開催蔵元)
※は私的感想です。

・酔鯨酒造   高知県  代表銘柄「酔鯨」

土佐の宴会には欠かせない料理、それが皿鉢料理です。皿鉢料理とは海、山の素材を使い作った料理を一つの皿に盛り付ける宴会料理の一つです。刺身から天ぷらまで、大きな皿に盛られた料理に合わせて酒を楽しみ、会話を楽しむというのが土佐の宴会です。こんな食文化、宴会文化がある土佐では、酒の味わいは、自然と「料理に合わせた味わい」、「料理を引き立てる味わい」が求められます。

酔鯨の味わいも、食事とともに楽しめる“食中酒”をあくまで追求してきました。人の味覚は、甘味、辛味、酸味、苦味、渋味の「五味」を基本としています。このうち清酒は、一般的に「甘味」や「辛味」が代表的ですが、酔鯨ではその他の「酸味」や「苦味」、「渋味」といった味わいも大切にしています。わずかな「苦味」や「渋味」が加わることにより味わいに幅や深みが生まれます。また「酸味」はキレの良い後味を演出します。

酔鯨の仕込み水は高知市の北部、土佐山地区の湧水です。この水には酒造りには適さない鉄やマンガンなどは含まれておりません。また、人の生活空間からは離れた山深く、自然のろ過を経て湧き出る水は新鮮です。新鮮であることは出来上がる酒にも受け継がれ、味にキレが有り、品質の劣化が少ない酒に仕上がります。

原料となる米は西日本各地の産地から取り寄せています。吟醸酒造りには酒米の最高峰、兵庫県産の「山田錦」を始め、広島県産の「八反錦」、岡山県産の「雄町」など、原料米の特性が明確な米を使用しています。地元高知で生産される酒造好適米「吟の夢」も吟醸酒、純米酒に使用しています。それぞれの米の良さを最大限に引き出す為、精米は可能な限り磨く(精米歩合が低い)ように取り組んでいます。自社基準による商品分けは、大吟醸酒は精米歩合40%以下(規格は50%以下)、吟醸酒は50%以下(同60%以下)、純米酒は60%以下(同基準なし)としています。精米歩合を下げることは原料費の増加に繋がりますが、目指す酒の為に妥協することなく取り組んでいます。

酔鯨では、全ての造りにおいて「適切なサイズでの仕込み」「しっかり造った麹による健全な醗酵」の2点を心がけています。少量仕込みとすることで、きめ細かな温度管理が可能となり、醗酵に適した良好な環境を維持することが出来ます。また麹をしっかり造ることで、醗酵が順調に進み、雑菌の増加を抑え、健全な醗酵が実現します。気温が高い土地で酒造りをすることは困難を伴いますが、だからこそ特色のある酒造りも可能となりました。麹をしっかり造り、迅速な醗酵をすることで適度な酸味が生まれ、キレの良い酒に仕上がります。これは酔鯨を特徴付ける大きな一つとなっております。

※地酒好きの方には酔鯨は馴染みの銘柄ではないでしょうか。酔鯨の良さは何んといっても大太刀の様にズバッと切れる感じの良さではないでしょうか。どんな料理とも最良の相性を見せる酸の働きは他の蔵元にありません。旨い酒には色々なタイプがありますが酔鯨は食中のポテンシャルがピカイチです。豊かな食文化の土佐でなければこの酒の味わいは無かったでしょう。派手な香りがあるわけでなく、飲み手の食事と寄り添う酒。それが酔鯨の酔鯨たる由縁なのだと思います。